メモ:ADHDの(神経心理学的)アセスメント

注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版

注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版

成人・児童問わずADHD症状を主訴に来院する患者は多い。

ADHD診断・治療の難しさにはまず鑑別(例えば双極性障害境界性パーソナリティ障害等との鑑別や併発)の問題が挙げられるが、心理職がこれに寄与できることとしてはアセスメントがある。

心理アセスメントを、

①治療的なアセスメント

②診断のためのアセスメント

の二つに便宜的に分けるとして、本稿では、ADHDに対する②診断のためのアセスメントについて簡単にメモしたい。

 

まず前提として、ADHDは神経系の障害である。そのため、ADHDそのものの診断の評価のためとしては、描画やロ・テストのような投影法は用いない。もちろん、うつ病などの二次障害のアセスメントとしては有効であるが。

こうした神経系の障害には神経心理学的検査が有効である。特に有効であると思われるものについて下記にメモ。 

なお、予め述べるが、どんなにADHD的な特性・プロフィールが検査結果において示されたとしても、それだけで確定診断を行うことは不可能である。

 

1)WAIS-Ⅲ、WISC-Ⅳ

基本である。

ADHDは実行機能の障害という考えがあることから、本検査ではワーキングメモリと処理速度の結果に反映されやすい。ディスクレパンシーとして、言語理解や知覚統合(知覚推理)と比較してワーキングメモリと処理速度の指標が低くなりやすい傾向にある。

統計的には特に処理速度の指数に、そして中でも"符号"課題において健常群との差に大きな効果量が見られる。

仮説的には主に筆記技能や見通し、注意集中が反映された結果であると考えられている。

ASD(PDD)でもこうしたワーキングメモリと処理速度が低くなる傾向にあるが、DSM-Ⅳ-TRまで併存しない(より重篤であるPDDが優先される)とされていたことからも分かるように、両者はかなりの重なりがあり、同じ神経学的基盤を持つとの考えもあるため当然ではある。

しかしながら統計的にも、あるいは臨床の実感的にもADHDの診断・主訴を持つ患者の方がよりこうした指標が差として低く出やすい傾向にある。

また、ウェクスラー式検査では、こうした量的情報のみでなく、同時に受検態度や回答傾向といった質的情報においても有効な情報を与えてくれる。

まず、全体を通した受験時の様子である。

ADHDの症状は大きくいうと、

①多動

②衝動性

③不注意

に分けられる。ウェクスラー式検査は導入・終了後の質問まで含めると、入室から退室までの平均時間は90分〜120分はかかり、心理検査はとしては最長の部類に入る(そのため患者の都合上二回に分ける場合もあるし、休憩を挟むことの方が多いが)。この時間が個人的には絶妙である。

例えば成人のADHDでは①多動性は有意に改善している場合が多い。

いわゆる一般的なADHDのイメージである「落ち着きがなく授業を聞かず教室でも走り回る」ような人は成人にはほとんどいないし、意外と児童でもこんなに分かりやすい症状を持つ人はいない。

神経疾患にも関わらずなぜこの問題が成人になると改善するかというと、学習するからである。つまり、社会的なルールに則り学習した結果、多動性というのは落ち着くのであるる。

が、こうした症候というのは、フラストレーショ場面では顕在化しやすい。

そのため、2時間近くも未知のテストを受けさせられている受検者は、随所でそうした多動性の特性が顕在化されるのである。

それは例えば、休憩の要求(喫煙など)、終わる時間の確認、早く終わらせるための投げやりな回答傾向、ため息、貧乏ゆすりなどの行為である。表情や検査者とのコミュニケーションにおいてイライラが確認できることもあるかもしれない。

 

 

(編集中)